恵方巻、恵方巻き(えほうまき)は、節分に食べると縁起が良いとされる太巻き、またはそれを食べる大阪を中心とした風習。別称として「丸かぶり寿司」「恵方寿司」「招福巻」「幸運巻」「開運巻き寿司」などと表現されることもある。豊臣秀吉時代の家臣が出陣の前日に巻き寿司のようなものを食べて大勝利したことに始まるという説や、江戸時代の終わり頃、大阪の商人たちの商売繁盛と厄払いの意味合いで、立春の前日の節分にこの恵方巻の習慣が始まったとされたと言う説もある。商業的催事として、これを利用した関係業界の販売促進活動・関連商品・商戦が20世紀後半から活性化している(#沿革、参照)。
節分の日は暦の上で春を迎える立春の前日にあたるので、一年の災いを払うための厄落としとして「豆撒き」が行事として行われているが、同日にこの「恵方巻」を食べる場合がある。
「節分」も参照
恵方巻は、節分の夜にその年の恵方に向かって目を閉じて一言も喋らず、願い事を思い浮かべながら太巻きを丸かじり(丸かぶり)するのが習わしとされている[1][2][3]。商売繁盛や無病息災を願って、七福神に因み、かんぴょう、キュウリ、シイタケ、だし巻、ウナギ、でんぶなどの7種類の具を入れることで、福を巻き込む意味があるとする説もある[4]。
恵方巻が活発化したきっかけは、後述のように関係業界の販売促進活動である。2000年代以降には、形が恵方巻に類似する円柱状の食べ物、ロールケーキなどの各種商品においても販売促進活動が見られる(#便乗商品にて後述)。
ミツカン[5]の調査による恵方巻の認知度は、全国平均は2002年(平成14年)時点の53%が2006年(平成18年)には92.5%となり、マイボイスコムの調査では、「認知度」と「食べた経験」に関して増加傾向となっている[6]が、「実際に食べた」と答えた人の全国平均は2006年(平成18年)の時点で54.9%である。また地方差がある(後述)[7][8]。
「実際に恵方巻を食べるか」についての地域差は大きく、2008年(平成20年)12月後半にアイシェアが行った調査では、関西・中国・四国にて「実際に食べる」が半数以上占めたのに対し、関東では「6割が食べない」などの結果が出ている[9]。
恵方巻の起源・発祥は諸説存在し、信憑性も定かではない[10][11][12]。
などがあるが、いずれも不確かである[10][11][12]。
大正時代初期に大阪の花街で、節分の時期に新香巻を恵方に向かって食べる流行があった[16]。
1932年(昭和7年)、大阪鮓商組合が「節分の丸かぶり寿司」に関するチラシを配布[11][12][16]。
1940年(昭和15年)、大阪鮓商組合後援会にて「節分の丸かぶり寿司」に関するチラシを発行(当時の価格は1本20銭)[11][12]。
戦後に一旦廃れたが、土用の丑の日に鰻を食べる習慣に対抗する販売促進手段として、1949年(昭和24年)に大阪鮓商組合が戦前に行われていた「節分の丸かぶり寿司」風習の復活を決定[11]。
1955年(昭和30年)頃、「元祖たこ昌」代表取締役・山路昌彦が当時行っていた海苔販売の促進活動の一環として恵方巻を考案[11][17]。
1973年(昭和48年)から大阪海苔問屋協同組合が作製したポスターを寿司屋が共同で店頭に貼り出し、海苔を使用する太巻きを「幸運巻ずし」として販促キャンペーンが展開された[2]。1974年(昭和49年)には大阪市で海苔店経営者らがオイルショック後の海苔の需要拡大を狙いとして節分のイベントで「巻き寿司早食い競争」を始めたこと、1977年(昭和52年)に大阪海苔問屋協同組合が道頓堀で行った海苔の販売促進行事、そのイベント「巻き寿司早食い競争」がマスコミに取り上げられたこと、関西厚焼工業組合も同時期頃に宣伝活動を開始したこと、などが契機となって、徐々に知名度が上がっていった[2][11][12][16]。
商業的に売り上げの落ちる1月後半から2月初旬の販売イベントとして、主にコンビニエンスストアを中心とし、スーパーマーケットなどの店舗において各地で展開。ファミリーマートが先駆けであり、1983年(昭和58年)に大阪府と兵庫県で販売が開始された[18]。道頓堀で行われた販売促進イベントがマスコミに取り上げられて関西に広がった。
関西厚焼工業組合の宣伝活動は広範囲で行われ、1987年(昭和62年)頃には「幸運巻ずし」の宣伝ビラが関西地方以外にも九州地方や岐阜市・浜松市・新潟市などの各都市に向けて送付された[12]。
全国への普及はセブン-イレブンによるもの[19][20][21][11]。1989年(平成元年)に広島市のセブン-イレブンが販売を開始し、翌年より販売エリアを広げ、1995年(平成7年)から西日本に販売エリアを拡大、1998年(平成10年)に全国展開をしたことで急速に普及した[19][20][21][2][22]。
その後は全国のコンビニで販売促進キャンペーンが行われている[3][11][23]。
スーパーマーケットでは、ダイエーが関西地方において1980年代頃には販売を行っており、関東地方の一部地域では1990年代前半から販売開始、ジャスコでは1992年(平成4年)から全国同時に販売を開始[24]、などのように同小売業態でも宣伝活動が行われるようになった[12]。さらに、2010年からは節分が2月だけではなく年に4回あることに着目した一部の店舗が「春の恵方巻」(5月)、「夏の恵方巻」(8月)、「秋の恵方巻」(11月)を売り出す動きが出てきている[25]。
節分に関連する商業的イベントとして、全国への広まり方はバレンタインデー・ホワイトデー・オレンジデーの菓子贈答と同じく、海苔業界やコンビニ業界など関係業界の主導のもと、恵方巻を巧みに利用して販売促進を目的とした傾向であり[11][26]、2000年代後半以降は恵方巻の他に便乗商品に関連する商戦が過熱化している[27]。
節分に関係の深い食材である豆やイワシに比べ、恵方巻は様々なアレンジが可能であることから新たな商品開発が行われ[28]、2000年代以降には本来の太巻きだけではなく「海鮮巻き」「ハーフサイズ」など食材・大きさの多種類化[28][27]や「阪神タイガースバージョン 虎十巻」のような公認グッズ[29]が出現した。
また、円柱状が類似しているだけで本来の太巻きとは全く関係が無いロールケーキ[30]などの洋菓子[28][31]、かす巻などの和菓子[32]、江崎グリコから「節分かぶりつきシリーズ」としてポッキー(鬼の金棒モチーフ[33])・プリッツ・コロンなどの一般菓子[28]、パン・トルティーヤ・ロールサンド・オムライス・包餅などの料理[28][34][35]を恵方巻仕様の商品に仕立て便乗して販売する事例が存在している。また、2011年(平成23年)には不二家も恵方巻きロールを発売。ファーストフード業界では日本ケンタッキーフライドチキンがレギュラーメニューの一つであるツイスターを恵方巻き替わりに奨めるPRをここ数年実施している。
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