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放射能(ほうしゃのう、英: radioactivity)とは、原子核が崩壊して放射線を出す能力のことである[1][2]。 放射能の単位はベクレル(記号 Bq)であり、1Bqは1秒間に1個の原子核が崩壊することである。[3]
日本語ではしばしば放射能と放射性物質と放射線とが混同されているが、その意味は明確に異なる。日常会話やマスコミ等において「放射能を浴びる」「放射能に汚染される」などの誤用が一般に定着し常用されている。また、英語では放射性物質のことを radioactive materials と表記するが、標識などにおいて radioactive と略記することが多く、これを放射能と日本語訳してしまい(厳密には放射性と訳さねばならない)、誤用が起きていると考えられる[要出典]。放射能は英語で radioactivity である。
放射能を持つ物質を放射性物質といい、原子核の種類を核種という。
同じ化学元素でありながら、質量数の異なる原子を、互いに同位体であるという。放射能を持つ同位体を放射性同位体と呼ぶ。
放射性物質は不安定であるため、一定の確率で原子核崩壊を起こし、それにともない放射線が放出される。この性質が放射能である。原子核崩壊は単に崩壊や壊変とも呼ばれ、主な原子核崩壊には、α崩壊、β崩壊、γ崩壊がある。崩壊にともなって、それぞれα粒子、β粒子、γ線が放出される。
放出された粒子や電磁波は高いエネルギーを持つ。このエネルギーは崩壊エネルギーと呼ばれる。
崩壊エネルギーは最終的に熱エネルギーに変わる。この熱エネルギーを電気エネルギーに転換するしくみが原子力電池や原子力発電である。
放射性同位体は、崩壊にともない一定の割合ずつ(指数関数にしたがって)量が減っていく。ある放射性同位体の量が半分に減るまでにかかる時間は核種ごとに一定であり、これを半減期という。半減期の長さは、1秒以下から数十億年のものまでさまざまである。
ある放射性同位体が放射線を放出した後にできる核種を娘核種(むすめかくしゅ)という。しばしば娘核種もまた放射性物質であるので、安定した原子核になるまで何回も崩壊を起こして別の核種に変わっていく。この一連の崩壊の系列を崩壊系列という。
ある放射性同位体(親核種)が崩壊してできた物質(娘核種)も放射性である場合を考えると、これら親核種と娘核種のそれぞれの半減期は一定であるため、ある時間が経過した後は、親核種の崩壊で生じる放射線と娘核種の崩壊で生じる放射線の比率がほとんど変化せずに推移する状態になる。この状態を放射平衡という。放射平衡になった場合、放射線量そのものは時間とともに減衰してゆく[4]。
放射能の強さは、1秒間に崩壊する原子核の数で表され、ベクレル(記号 Bq)という単位で表す。原子核が崩壊する時に放射線を放射する。かつては、1グラムのラジウムが持つ放射能を単位とし、これを1キュリー(記号 Ci)としていた。1グラムのラジウムは毎秒3.7×1010個のα線を放射しているので、1キュリーは3.7×1010 Bqである[5]。
放射能を直接測定することは難しいので、放射線を測定して、放射性物質の量を求めることが多い。
放射能を直接測定する方法には、加速器を使用する AMS(Accelerator Mass Spectrometry = 加速器質量分析計)法などがあり、放射性炭素年代測定に応用されている。
「被曝#放射線障害」、「放射線障害」、「放射能汚染対策」、および「シーベルト」も参照
人体が放射線にさらされることを放射線被曝、またはたんに被曝という。
放射線による健康への悪影響を放射線障害という。
急性放射線障害としては、たとえば約4 Gyの被曝で半数の人が死亡するとされている[4]。
慢性放射線障害としては、何年もたってから白血病や癌などを発病するかどうかは確率的である。被曝が長期的にどの程度の危険をもたらすかについては、人体実験が不可能な事や長期間かかる事・対象群が設定しづらい事・症状が非特異的である事・遺伝的影響では更に時間がかかる事などから見解は定まっていない。
人体はおよそ6,000-7,000 Bqの放射能をもつ。これは主に人体に含まれるカリウム40や炭素14という放射性物質によるものである。カリウム、炭素は生体必須元素であり、世界中に同レベルの放射性同位体が分布している以上この被曝を避けるすべは無いが、このレベルの被曝または更なる追加がどのような生体影響を持つかは不明である。一般的に実験や研究で用いられる放射能は MBq (106 Bq) 単位であることが多いが、診断治療目的を除きこれを経口摂取するわけではない。
現状では統計的に有意ながん増加は>約100mSvで認められるが、国際放射線防護委員会(ICRP)は、その勧告の中で年間100mSv程度以下の線量においても増殖可能な損傷細胞は生じ得るため、がんおよび遺伝性疾患の発生確率にしきい値は無くその確率は線量に比例する、としている[6]。一方、フランス科学アカデミーは、このような実際のデータがない部分について高線量で生じることは低線量でも起きるとする考え方に反対する立場をとっている[7]。
体外から放射線を浴びることを外部被曝という。外部被曝を防ぐには、遮蔽、距離、被曝時間が重要である。詳しくは被曝#外部被曝の防止を参照。
放射線障害を防止するため、法令により、人体が被曝する放射線の量(線量)に限度が設けられており、放射性物質を取り扱う場合はこの値を超えないようにする必要がある。また放射性物質を取扱う施設の仕様、放射性物質の購入・保管・廃棄の管理、汚染の管理、管理被服や放射線防護服、保護具の着用も法令や施設の内規で定められている。
放射性物質を含んだほこりなどを吸い込んだり飲み込だりして、体内の放射性物質によって被曝することを内部被曝という。内部被曝の場合は、外部被曝の場合にくらべて桁ちがいに大きな被曝を人体に与える[8]。
原子力災害時の放射線(放射性ヨウ素)障害予防薬についてはヨウ素剤・ヨウ化カリウムおよびヨウ素酸カリウムを参照。
また、放射性セシウム体内除去剤としては、紺青(別名:ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)、プルシアンブルー)がある。商品名では「ラディオガルダーゼカプセル」[9]。
動物に対する放射線対策の研究の一環として、1997年ビーグル犬に2 Gy・5 Gyの放射線照射を行い、アガリクス・ブラゼイ(菌類)による免疫低下抑制評価を行ったという学術文献が報告されている[10]。
放射線が発生している場所、例えば病院や診療所のレントゲン撮影室などには、右記のような放射性標識(産業安全標識では放射能標識とされている)が表示される。3つの葉は、アルファ線、ベータ線、ガンマ線を意味している。
UnicodeにはU+2622に放射性標識がある:
チェルノブイリ原発事故を契機に、輸入食品内における放射能の暫定限度が370 Bq/kg(セシウム134+セシウム137の合計値)に設定され、これを超える食品は日本に輸入することができない[11]。
福島第一原子力発電所事故後の暫定基準値(ざんていきじゅんち)については食品に含まれる放射能に関する暫定規制値の項目を参照。
放射線や放射性物質の性質を利用し、放射能をもつ物質がさまざまな分野で利用されている。
放射線が細胞分裂を止める性質があるので、ガン細胞の治療、医療器具の滅菌、ジャガイモの発芽防止などの目的でガンマ線の照射が行われるが、その際に放射線源として放射性物質であるコバルト60が利用される場合がある。
放射性物質をじかに利用する例としては、バセドウ病など特定の病気の治療薬として放射性物質を投与することがある。また放射性同位体を投与し、その蓄積度合いを計測することによって腫瘍などの身体の異常を調べる検査(シンチグラフィ)も行われる。放射性同位体は、非破壊検査や、海底の砂の流れの観測などにも用いられる。また地層、生物遺体や土器などの年代を、特定の放射性同位体の含有量により測定する方法(放射年代測定)が地質学や考古学で用いられる。
放射線による害がよく知られていない時代には民生用品にも放射性物質が使用されてきたが、現代ではほとんど利用されなくなった。例えば、ある種の火災感知器では空気の密度を測るために放射性物質であるアメリシウム241が使われたり、蛍光塗料にラジウムを添加して、時計の文字盤などにつかう夜光塗料が作られていた。 他にも、静電気除去、製鉄、ランプの覆い、蛍光灯の点灯管などに放射性物質が利用されていた。
マイナスイオン発生器などに、トルマリン鉱石のように微量の天然ウラン等を含有する岩石が使用されることがある。
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